#038 増加するネパール国籍の相談者
こんにちは! 専門家相談コーディネーターの青柳りつ子です。
東洋大学福祉社会デザイン学部教授 南野奈津子さんからの投稿記事を掲載します。
南野さんにはCINGAの「外国人対応者のための相談室」のアドバイザーを務めていただいています。寄せられた相談の中で特に、福祉、児童に関わる複雑なケースについて事例を検討し、より良い対応につなげていくことを目指しています。

2024年度の外国人相談報告から気づく事の一つが、ネパール国籍の相談者の増加です。
おそらく多くの人の感覚として、ベトナム国籍の労働者や留学生の増加は感じていたかと思います。が、2023年度から2024年度にかけてベトナム国籍の相談者は37ケースから43ケースで6ケースの増加でしたが、ネパール国籍の相談者は11ケースから27ケースと大幅な増加となりました。ネパール語の通訳のニーズについての声を聞くことも増えたと感じます。
法務省「在留外国人統計」によれば、2024年末の在留外国人の上位5カ国は中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパールとなり、初めてネパールがブラジルを抜き、在留外国人数の上位5カ国にランクインしました。233,043人ネパール国籍の外国人のうち最も多い在留資格は「留学(85,431人)で、中国に次いで2位となっています。そして、ベトナム(3位、46,367人)よりはるかにおおい数となっています。
なぜネパール国籍の外国人が急増したのでしょうか。
その理由はいくつかありますが、これまでは多かった中国や韓国、ベトナムからの留学生が近年は減少気味である状況を受けて、日本語学校や政府がネパールでの広報や誘致に重点を移したこと、ネパールにとっては平均所得の低さの改善や国の発展のために日本その他の外国への人材の送り出しと仕送りへの依存が国益とも一致したこと、日本の治安の良さやアニメなどの文化が若者にとっては魅力となったこと、などが挙げられます。
ただ、多くの留学生は経済的にも心理的にも余裕がない中で生活しています。
また、日本でも通訳の確保や相談支援の整備が追い付いていないため、何か生活に影響が出るような事態が発生すると自力で生活を立て直すことが難しいことも推測されます。さらに、短期間で急増しているのでコミュニティが形成されづらく、留学での在留となると学校で同国の友人とつながることはあっても、地域での共助コミュニティが形成されづらいともいえます。
こうした状況ゆえに、今後も相談は増える可能性は大いにあります。相談対応者も、支援者同士で支援に関する情報や経験を共有しながら相談に対応することが大切だと痛感しています。
CINGAが実施している、「外国人のための遠隔無料専門家相談会」と、「外国人対応者のための相談室」の詳細は以下の「詳細はこちら」ボタンよりご覧ください。